突撃!大豆にインタビュー!!

 

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 真面目な彼は集合の30分前には早々と姿を現した。「お待たせしてしまって申し訳ありません。」深々と頭を下げ、私が席に着くのを確認してから、彼は腰を下ろした。とても礼儀正しい。

年下とは思えないほどよくできた彼の態度に少々面食らいながらも私はインタビューを開始した。

 

 

Ⓠ、お名前は?

Ⓐ、大豆と申します。その名に恥じないようなビッグな男になりたい所存であります。

 

Ⓠ、突然ですが、今大豆さんはとても重要な進路選択の時期にあると伺いました。何か希望する進路はあるのでしょうか?

Ⓐ、第一志望としましては、やはり一番人気の味噌ですね。月並みな回答でお恥ずかしいのですが。栄養価も豊富で様々な料理に用いられていて、みんなの憧れです。

 

Ⓠ、なるほど。味噌が人気なのですね。ほかに人気の進路はどのようなものがあるのですか?

Ⓐ、女性に人気なのは豆腐ですね。色白ですし、カロリーも比較的低めなので。やっぱりあのプルプルの美肌にあこがれない女子というのはいないのではないでしょうか。

 

逆に男性に人気なのは醤油です。色黒でいろんな場面で求められる頼れる男!という感じでたくましいイメージですね。

 

また、最近の若者に人気なのはSOYJOYです。学生生活をチャラいサークルなどで過ごした大豆は「やっぱ時代はSOYJOYっしょ!横文字横文字ぃ!」と肩で風を切って歩いています。

私のような硬い者には似合わない世界なので関係のないことだと聞き流してはいますが、一応どの進路が人気なのか自分なりに調べてはいます。

 

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若者に人気のSOYJOY。カラフルで様々なフレーバーがある。

 

 

彼はカバンから資料を取り出し、わかりやすく説明してくれた。

ファイリングされた膨大な量の資料はごちゃごちゃにならないようきれいに整頓されていた。彼のマメな性格がうかがえる。

インタビューを続けている中で、私の興味はどんどんと大きくなり、もっと大豆について知りたいと強く思っていた。

 

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Ⓠ、では逆に不人気な進路先というのはあるのでしょうか?

Ⓐ、最も人気がないのはなんといっても納豆でしょう。理由としましてはシンプルに臭いからです。完全なるヨゴレ仕事として認識されています。私も納豆だけにはなりたくありません。

女性陣からは「どう考えても納豆のほうが豆を腐らせてるのに、なんで豆腐が豆が腐るってかくのよ!」との声もちらほら聞こえますがなぜなのでしょうかね。ハハッ。

あとシンプルに臭いという声もよく聞こえます。

また、男性から不人気なのはもやしです。ひょろくてかっこ悪いというのが主な理由ですね。

女性からは「スレンダーで憧れる」といった声も少なくないのですが…。

私の個人的な意見としましてはやはりあんな、豆に毛が生えただけのようなものにはなりたくないです。若かった頃はあのスマートさを夢見たこともありましたね。

まああの時はまだ私も青かったということです。枝豆だけに。

 

 

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みんなの嫌われ者である納豆。ちなみに筆者も納豆が嫌い。理由はシンプルに臭いから。栄養価が高いとか聞くけれども知ったこっちゃないのである。

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Ⓠ、ははは(苦笑)。大豆界にもいろんな事情があると。

男女で価値観に差があるのは人間と同じですね。

ところで博識な大豆さんは人間界にも精通していると伺いました。そんな大豆さんが尊敬する人間はおられるのでしょうか?

 

Ⓐ、難しい質問ですがしいて言うなら俳優の阿部寛さんです。彼はシリアスからコメディまで幅広い演技をこなします。

食卓を陰から支える調味料としての一面と時には主役にもなり得るポテンシャルを併せ持つ我々大豆からするとシンパシーを感じます。かっこいいのに飾らない姿勢にも好感が持てます。

 

 

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Ⓠ、なるほど。言われていればどことなく顔も大豆に似ている気も…。

それでは最後の質問とさせていただきます。大豆さんがこれまで生きてきた中で最も苦労したことは何か教えてください。

 

Ⓐ、…この質問はどの大豆に聞いても同じ答えが返ってくると思います。

忌まわしきあの日、節分です。鬼という圧倒的戦力差のある相手に特攻させられる大豆の気持ちをあなた方人間は考えたことがあるのですか!?

相手は金棒を持っている可能性もあるのですよ?それに対して人間の武器は大豆って!絶対おかしいでしょう!本当に退治する気があるのですか?ないですよね?

人間が本気を出せばその化学力でいくらでも鬼に対抗しうる武器を開発できるはずですもの。

 

「鬼は外、福は内。」じゃあ豆は!?家の外にも内にもほったらかしたままの事案がどれだけ多いことか…。

毎年どれだけの大豆が犠牲になっていることか!はっ!失礼いたしました。取り乱しました。とにかく質問の答えは節分です。

 

Ⓠ、な、何かすいません。これにてインタビューは終了です。今日は忙しい中ありがとうございました。

 

Ⓐ、ありがとうございました。

 

 

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彼が過ぎ去っていった後でも、私は彼の残影におびえてその場からしばらく動けなかった。それほどの豹変ぶりであった。

そして私は思った。鬼とは家の外へと追い出すものではなく、誰の心の内にも存在し得るものなのだと。

またそれは大豆だけでなく人間にも言えることだ。

 

私はカバンに間食用に取っておいたSOYJOYをゴミ箱に投げ捨ててその場を後にした。

 

 

     END

 

 

 

 

 

これは私が大学二回生の頃、ゼミメンバーで「一冊の雑誌を作ろう」という授業があり、一人2ページ自由な記事を作れと言われ書いたものだ。(今回はブログ用に少しだけ再編集したが文章はそのまま)

今見返してみると我ながら全く意味が分からない。

 

しかしゼミのメンバーにはそこそこウケて最優秀賞を受賞することが出来た。

この賞の重みは皆さんの想像以上のものである。

 

なぜなら私はゼミに友達が全くと言っていいほどいなかったからだ。

ゼミのLINEグループに招待されるはずもないような陰の者。

部活の朝練で心身ともに疲弊し、死んだ顔で授業を受けていた私は学校では空気のような存在。

 

仲良さそうに話しているゼミ生たちとは対照に、私には周りの後ろ盾など全くない。

実力のみで勝ち取った賞だと自負している!!

 

完成した雑誌をみんなが読んでいる時間にちらほらと「なにこの大豆w」「キモいけどウケんだけどw」「これ誰が書いたのw」などとギャルズが話しているのを横目に、

私ははただしめしめと白々しい顔をしながら軽くニヤけていた。(友達がいないため堂々と名乗り出るようなことはしない)

 

 

 

アホにもほどがある記事だがかなりノリノリで書けた記憶があるのでまた機会があれば同じ設定で書いてみたい。