ちょっと男子ぃ〜という通過儀礼

「ちょっと男子ぃ〜」とは男子の成長の過程で必ず通らなくてはならない関門である。

 

 

主に中学生など思春期真っ只中多感な時期にそれは訪れる。

文化祭などの演劇や、合唱コンクールにおいてクラスのリーダー格の女子から

ふざけてばかりでちゃんと練習しようとしない男子に向けて放たれる一言だ。

合唱コンクールの場合、指揮者及びピアノ伴奏者が言うことも多い。

 

 

悲しいかな、この一連の流れは誰も悪くないのだ。

 

もちろん注意する側の女子は正論を言っている。

クラスで一丸となって金賞を目指して努力することは素晴らしいし、周りを引っ張っていこうという姿勢は模範的と言えるだろう。

 

 

 

一見おちゃらけの男子が悪いように思える。

しかしこれは誤りだ。

男子も悪くない。

 

 

中学生男子は中々合唱コンクールで全力で歌うことが出来ない。

何故なら

「ちょっと悪びれてる方がかっこいい」だとか「そもそも人前で歌うのがちょっと恥ずかしい」だとか

「オレ本気出してねぇしという保険を常に貼っておきたい」といった様々な思惑が混在しているからだ。

 

本当は男子だって全力で戦いたい。

本気でやって金賞を狙いたいんだ。

 

しかし素直になることは容易ではない。

中学男子というのは意地とプライドだけで成り立っているような存在。

その唯一の柱が折れてしまっては学校で精神を保つことすら難しい。

 

 

いざ本気で歌おうものなら馬鹿にされることは必至。

「如何に余裕でいられるか」という水面下でのマウントの取り合いが常に行われているのだ。

如何に追い込まれようとも固い意志で余裕の表情を演じなければならない。

なんなら文化祭の演劇などやる前からとっくに大芝居をうっているということだ。

 

 

 

誰も悪くないのにクラスの仲がどうしても悪くなってしまうイベント。

それが「ちょっと男子ぃ〜」なのだ。

ここでポイントとなるのがリーダー格女子が「男子」と一纏めにしてしまっているということ。

 

男子の中にももちろん真面目に歌っている者もいるし、なんなら女子の中にも真面目に歌っていない者もいるだろう。

しかし男女の壁はベルリンの壁の如く巨大で

男子VS女子という構造が出来上がってしまう。

 

この後担任がキレたりして仲を取り持ち、なんやかんやでいい感じになってクラスが纏まるというのが黄金ルート。

似たような思い出は皆あるんじゃないだろうか。

 

 

 

 

 

かくいう私は4つ上の兄がいる為、なんとこの「ちょっと男子ぃ〜」があることを兄から聞いてしまっていた。

 

「何か''ちょっと男子ぃ〜''ていうイベントあるから気ぃつけや」

 

と予め忠告を受けていて尚且つ偶然大きな声で歌うことに全く抵抗がなかった私は結局中学時代に「ちょっと男子ぃ〜」を聞くことは出来なかった。

 

未だに大人になり切れていない気がするのはこの為だろうか…。

 

 

無理やりでも言ってよ、ちょっと女子ぃ〜。