小は大を兼ねない

変な人というのは多分一定数存在していて、人通りが多い所に行くと自ずと変な人と遭遇する確率は上がる。

 

先日遭遇した40代くらいの男性の話をしよう。

 

 

12月末世間はクリスマスムードに包まれていた。神戸の街は気温10℃以下、街行く人は皆コートを羽織っていた。

 

彼も例外ではなく黒いダウンを羽織っていた。

その男性が人と違ったのは下半身。カーキの半ズボンを履いていた。

半ズボンとはいうものの膝まで見えているタイプのもので4分丈くらいであろう。

見ているこっちが寒くなる。

 

よく見ると半ズボンの裾が少しほつれていることに気付く。綺麗に細断されているもののどこか違和感を覚えた。

さらによく見てみるとポケットまで半分に切られているではないか!

つまりその男性は長ズボンを半分に切って、半ズボンとして履いていたのだ。

呆然としている間に彼はどこかに行ってしまった。

 

 

 

彼がなぜ長ズボンを半分に切ったのか…真実はわからない。

わからないから考えられる。

さあ妄想の時間だ。

 

 

考えうるケースは2つ。

 

①履くズボンなかった説

彼が身につけていたダウンも件の半ズボン(長ズボン)も少し薄汚れていた。

その上彼の髭はずっと手入れをしていない無法地帯だったように見えた。

男性は金銭的に余裕が無く、単純に履くズボンが一着しか無かったのではないか?

 

真っ先に浮かんだのがこの考えだ。

しかしこの説には致命的な欠点がある。

 

 

想像して欲しい。

もし仮に履くズボンが長ズボン一着だけだったとして、そのズボンで一年を過ごさないといけない場合。

 

あなたはその長ズボンを半分に切るだろうか?

仮に猛暑の夏の日で、下半身がムレッムレだったとしてもハサミを入れるだろうか?

答えはNOだ。

冬の日を考えると暑いのは我慢して夏を乗り越えるに違いない。

下半身がムレッムレでも命に別状はないだろう。しかし真冬の半ズボンは生命の危機に直結する。

 

 

さらに彼はダウンを着ていた。

その中、上半身に何を着ているかはわからないが、体温調節をするなら上半身で行うのが定石だ。

 

これらのことから①の説は可能性が低い。

 

 

 

 

②オシャレ説

オシャレは常に常人の理解を超えてくる。

パリコレのウォーキングなんて見てるともう服なのか布なのか、着ているのか裸なのか本当にわけがわからないものばかりだ。

 

パッと見ダサいと思われるものでも偉い人がオシャレと言ったらオシャレになる。

その年流行る物が予め決まっているそうな。

 

 

特に学生時代私服がダサいと散々言われ、苦汁を味わってきた私からするとオシャレの世界は程遠い。

 

 

 

あの男性がもしファッション界のカリスマ的存在だとしたら。

 

「長ズボンを半分に切って半ズボンにしたらかっこよくね?」

 

この鶴の一声で一年後日本中の長ズボンは半ズボンになる。

彼は流行の最先端をいっていたのかもしれない。

ダメージジーンズの進化系と考えればそれほど違和感は無いし、彼の伸び散らかった髭もワイルドなスタイルと思えば合点がいく。

 

 

私は②の説が濃厚だと考える。

 

 

 

もし①なら男性は儚いし、②なら私は履かない。