結局焼肉のタレが一番うまい
大学時代、ありがたいことに練習がある日はマネージャーが全て料理を作ってくれていた。
常に合宿生活という特殊な形態の部活だった為マネージャーの仕事は普通の体育会とは大きく異なっていたのだ。
問題はオフの日。
マネージャーは当番制で交代に合宿所に泊まっていた為、オフの日は当然誰も来ない。
つまり飯もない。
そう、自ら作らなければならないのだ。
幸いなことに米は大量に用意してある。
卵も毎食一つは食べていいルールで、私はいつものご飯の時は食べていなかった為、勝手にその分をオフに回していた。
あと合宿所にある調味料も好きに使える。
さあ松坂ズキッチンの始まりだ。
私に料理のスキルなんて全くない。
が、最終的に焼肉のタレさえかければ最強になるということを知ってしまった。
貧乏学生らしく、駅の近くのスーパーで安くなっていたカットしてある野菜と豚肉を買う。
合わせて300円くらいであろうか。
野菜を塩胡椒をかけて適当に炒める。
その後豚肉もめちゃくちゃ適当に炒める。
ちょっと肉をこんがり目に焼きたかった為、野菜とは別々に炒めていた記憶がある。
二つを混ぜ合わせ焼肉のタレを絡めてさらに炒める。
もうこの時点で破壊的な匂いがキッチンに立ち込める。
胃がこの肉を求めているのがわかり、自動的に腹にスペースが空く。
本能だ。身体が本能でこの肉を欲しがっているのだ。
最強の野菜炒めが完成した。
2合炊いたご飯をどでかい茶碗に盛り付ける。
多すぎるご飯もこんな最強の相棒があれば食い切れないはずがない。
ご飯の上に野菜炒めを豪快に乗せる。
理由は洗い物を増やしたくないからだが、画力はとてつもないものになっている。
おまけに適当に作ったスクランブルエッグを乗せる。
半熟が好ましい。
その上に更にマヨネーズまでかけてしまう。
絶対にお母さんに見られたら怒られること間違いなし。
これはもう人類の業だ。
逃れられないカロリーのカルマにその身を委ねる。
完成。
「カロリーの塊丼」。
繊細な味付け、計算された栄養バランス、色鮮やかな見た目…そんなものは一切必要ない。
全て焼肉のタレをかけて上塗りしてしまえば結局一番美味いのだ。
背徳感も相まってその美味さは犯罪級。
もう誰にも止められん。
美味さ=正義。
焼肉のタレは全てを超越し、飲み込んでしまうブラックホールなのだ。