社訓 後日談

昨日まで3日間に分けて合宿研修の様子を綴った。

この話にはちょっとした続きがある。

 

実は最終日には社訓をどれだけ大きな声で言えるかをチーム毎に対決するというこれまたトンチンカンなコーナーが存在した。

 

グラウンドを盛大に使い、

 

      Aチーム

 

 

      教官

      

 

      Bチーム

 

このように向かい合い中央の教官に向かって社訓を一人が先導し、その後に他のメンバーが叫ぶ。

各チームこれを行い、より声を届かせた方の勝ちという新興宗教チックなバトルだ。

我々のチームはこの戦いでも好成績を残した。

 

 

 

 

 

 

合宿は終わり、普通に大阪の会社に向かう毎日が始まった。

 

うちの会社は月初めの月曜日には会社単位での朝礼を行なっている。

そこには役員一同集結し、場合によっては社長や副社長も来ることがある。

 

 

その中で若手社員による社訓の発表がある。

5月の朝礼、我々新入社員が初めて参加する朝礼だった。

同期で最初に社訓の白羽の矢が立ったのは松坂であった。

どういう人選かは知らないが試されているような気はした。

 

 

 

迎えた朝礼当日。

役員を目の前に、数百人の注目を浴びるのは少しばかり緊張したが、何にせよ舐められるのは嫌だった。

こんなことでビビってると思われたらダサい。

 

「今月の社訓は不動産1部松坂さんです。お願いします。」

 

司会に呼ばれ、席を立つ。

とにかく合宿で習った通り全力で叫んだ。

スーツ姿には似合わないダミ声だったに違いない。

 

 

 

結果的に私は周りから好奇の目に晒されることになった。

私の倍以上の歳をした大人が指を指し嘲け笑った。

ざわつく室内、どよめく大人たちの声。

課長には恥ずかしいことをするなとまで言われた。

 

要は合宿研修でやったほどのボリュームの社訓は会社では一切行われていなかったのだ。

どうやら普段はもっと淡々と読むように社訓を言っているらしい。

 

 

 

 

ふざけるな。

 

 

 

あんたらが教えたことを全力でやっただけの話で咎められる筋合いは全く無い。

 

 

正直やる前からどうせ誰もこんな大声でやってないんだろうとわかっていた。

 

 

そして別に私は大声で社訓を言うのが偉いとも思っていない。そんなことはしなくて良いと思っている。

そもそも業界柄かわからないが、前時代的な無駄なしきたりが多すぎる。

誰もやりたくないことを何故するのか。

 

 

だからこそ新入社員の私が逆説的に証明したかった。

あんな研修は意味のないものだったと。

 

あの研修で習ったものを愚直に実践しても笑われる。

なあなあの社訓が良しとされている、全力でやって笑われるなら初めからそんなものしなくて良い。

 

新入社員が笑われる姿を見て、役員の方々に少し思い直して欲しかった。

 

 

 

 

もう辞めた身の人間が何を言おうと重みがないのは承知しているが、印象的な出来事だった。

 

 

喧騒の中私は堂々と椅子に座り直した。