無音のオノマトペ
うちは窓を開けて寝ることが多い。
最近は夜に騒ぐ輩も少なくなり、静かな夜を過ごす毎日だ。
ただ本当の意味の無音というのは未だに味わったことがない気がする。
意図的に手で耳を塞いだ時には耳の中で流れる血の音みたいなものが聞こえる気がする。
イヤホンやヘッドホンを付けた時には、外からの雑音はシャットアウトしているが耳とヘッドホンとの衣擦れの音は避けられない。
収録用のスタジオなどは防音設備が整っていて限りなく無音に近い環境と言えるだろうが、そういった場で静寂することもないので本当の意味での無音というのをまだ知らない。
漫画における無音を表す擬音「しーん」は手塚治虫が考えた、というのは有名な話だ。
確かに静かなことを音で表現するなんてよく考えると矛盾している。
手塚治虫はいつこの「しーん」を思い付いたのか、それとも実際に聞こえたのか。
「しーん」の先入観があるからかもしれないが、耳を塞いでいる時に音が聞こえる気がするのも、あながち間違いとも言い切れない。
ここでふと家に一冊だけある英語版の「ONE PIECE」20巻を手に取ってみる。
実はここに日本と英語圏との擬音の違いがわかる一コマがあるのだ。
邦題は「決戦はアルバーナ」。
まずは日本語版を見て欲しい。
ウソップの一撃をくらい、敵のMr.4が気絶するシーン(Mr.4のリアクションが遅すぎるだけで実際は全然効いていない)。
擬音は手塚治虫御用達の「しーん」だ。
ここで英語版の同じシーンを見てみよう。
「しーん」の部分は「SILENCE(静寂)」とそのまま英単語として書かれている。
恐らく英語には「しーん」に当たるような静かさを表す擬音が存在しないのだろう。
流石漫画の神様、手塚治虫。
世界中で無音の音なんて発想が出来たのは彼一人だけだったのだ。
たまに自分で見返して
「え何言ってんのこいつ、めっちゃスベってるやん」
と思うことがあるこのブログも、
しーんという擬音がお似合いかもしれない。
てやかましいわ。
静かやけどやかましいわ。